「存立危機事態」は厳格かつ限定的に解釈運用すべし(シリーズ6 結)

 日米安保の「事前協議制度」も戦争巻き込まれを防ぐための大事な予防策

(事前協議制度)
   米軍が台湾支援のため在日米軍基地から戦艦や爆撃機を発進させて中国軍を攻撃する → 中国軍は発信基地であるわが領土内の米軍基地に反撃を加えてくる → 政府は76条1項一号の出動命令を発する。
   これは、自衛隊が台湾有事において防衛出動するもう一つの可能性である。存立危機事態を認定することなく、一号の出動で反撃能力を行使しつつ中国への攻撃を行う、対中戦争の始まりである。 
わが国が厳格かつ限定的解釈のもと集団的自衛権行使を抑止したとしても、上記のような流れで事が進めば、自衛隊は防衛出動をやむなくされ、日本が戦争に巻き込まれることとなる。
これを防ぐ策を考えなければならない
その策はある。日米安保条約の事前協議制度の活用である。

日米安保条約の第6条に関する岸・ハーター交換公文で、「日本防衛以外の目的で米軍が日本国内の基地から戦闘作戦行動に出撃する場合などには、日米が事前に協議を行う」ことが確認されている。1960年の安保条約締結の際、米軍の在日基地からの行動により日本が戦争に巻き込まれることを防ぐために設けられた。
1960年代のベトナム戦争のころ、日本の基地から飛び立った米軍機が北爆しているのではないかという疑いから、この事前協議によりアメリカに在日基地を利用させないよう申し入れすべきだ、との議論があった。そのころ、米軍の核兵器を積んだ空母や原子力潜水艦のわが国への寄港問題もあり、その時もこの事前協議制度で寄港を拒否すべきだとの議論が盛んであった。 
その後、この事前協議制度の活用をめぐる議論は低調ではあるが、この制度はまだ生きている。
台湾有事の際、米軍が台湾支援の軍事行動を始めたら、在日米軍基地からの中国への戦闘作戦行動が当然予想される。わが国が「戦争」に巻き込まれるのを防ぐためにはこの事前協議制度により米軍の在日米軍の利用を拒否することが何よりも大事なはずである。

しかしながら、「台湾有事は日本の有事」が言われ始めても、護憲平和勢力の間で、この事前協議による「戦争巻き込まれ」を防ごうとする議論は巻き起こらなかった。(注1)
 
(事前協議で「ノー」と言わずにわが国が攻撃された場合)
 米軍の在日基地からの戦闘行動に対し、中国軍は反撃としてその基地を攻撃して来よう。わが国があえて事前協議を求めず米軍の戦闘行動を容認していた場合、中国軍のわが領土への攻撃について76条1項一号に該当するとして、防衛出動を認めることに問題はないであろうか。
 一号の「我が国に対する外部からの武力攻撃」は、「急迫不正の侵害」ともいわれている。米軍攻撃に対する反撃とみざるを得ない中国軍の攻撃は「不正」(違法)といえるであろうか。また「急迫」に当たるかどうかも疑問ではないであろうか。
 こうした疑問を起こさせないためにも、政府は事前協議制度により「在日米軍基地使用の拒否」をすべきなのである。

 (注1)     2022年4月13日に国会の外務委員会で、立憲の岡田克也議員が林外務大臣に事前協議制度に関してかなり厳しい質問をしている。
  岡田議員は同制度が「ノー」というためのものではく日米同盟の利益との兼ね合いで諾否が決められるとの前提に立ってはいるが、米軍による在日米軍基地からの戦闘行動が相手国からの攻撃を招き日本の安全に大きく影響を及ぼす事態であることから「イエス」の判断にも相当に慎重であるべきだと考えていることがうかがえる。

  岡田議員はその質疑の場で諾否を決めるための考慮要素を4点あげて外務大臣に提案していた。①米軍が攻撃を行うことの必要性と正当性、②在日米軍基地を使わずに目的を達成できる可能性、③攻撃が行われることにより日本が受ける影響、とりわけ日本が攻撃を受ける可能性、④日米同盟に及ぼす影響。
  これに対して、林外務大臣はこの4点を含めて他の要素も入れて検討する旨答弁していた。
  岡田議員は諾否を決める政府内の手続規定が不十分であることにも言及し、その点も含めて今後とも事前協議制度について議論を重ねる必要を述べていた。

https://www.youtube.com/watch?v=CfsAtyA8tiQ&t=14s

(終わり)

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