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「敵基地攻撃」審議の前に「日中対話」を

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  「 中国には、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めます。同時に、諸懸案を含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、本年が日中国交正常化五十周年であることも念頭に、 建設的かつ安定的な関係の構築を目指します 」。 と 岸田首相は、年明けの通常国会冒頭で所信表明をした。  大変結構なことだと思う。ぜひとも早く実行していただきたい、隠居老人は心から願う。    国会の中には、自民党右派を中心に、中国と「この時期での対話・協議」に反対ないし消極的な意見があると聞く。安倍前首相も岸田内閣にプレッシャーをかけているとか。昨秋には、中国外相の林外相への対話申し出に対して、自民党の防衛族議員らが「応ずるべきでない」と声を上げていた( ここ )。 衝突への危険を減らし関係の改善をするには、両国間の対話・協議が必要なことは誰が考えてもわかる。それなのにどうして反対するのか。 日中間の懸案事項としては「中国脅威論」「中国の覇権主義」と関連する領土問題、台湾問題、人権問題などがある。 中国と対決姿勢を強める日本の右派勢力も、上記の懸案事項について中国に抗議する(「主張すべきことは主張する」)こと自体はおそらく反対しないと思われる。だが、双方の主張をかみ合わせることは、誤解が解けたり、解決の道筋を見出したり、さらには話し合い継続を確認するなどして、緊張緩和ムードとつながる可能性が高い。 自民党右派は、そのこと自体を、現時点において好ましいとは考えていないのであろう。 「敵基地攻撃」 問題審議を今国会の最重要課題のひとつと考える勢力にとっては、 日中の緊張関係の存在はそのための大切な舞台装置 なのである。 老人らしいくどい説明をゆるしてほしい。 安倍政権が推し進めた安全保障政策は、わが国をとりまく環境が変わったこと、すなわち北朝鮮や中国の「挑発的、覇権主義的行動」に対処するため、日米同盟を強化し、わが国自身の防衛力を高めなくてはならない。というのであった。その最大かつ典型的なものが「敵基地攻撃能力」の構築なのである。 自民党タカ派勢力は、この国会で「敵基地攻撃能力」構築の審議をぜひとも成功させたいと考えている。その大事なときに、前提となる「中国脅威論」「中国の覇権主義姿勢」がゆるみかねない緊張緩和ムード、中国の「平和共存姿勢」「ウイン・

相手を知り己れを知れば平和危うからず

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    正月のテレビで「山本五十六」をやっていた。香取慎吾が恰好いい。老人は、阿川弘之の小説で山本のことを知り、すごい人物だとおもっていた。  山本は、アメリカとの戦争について、 かの国の国力が日本とけた違い であることを知って「戦えば日本は必ず負ける」との考えをもっていた、海軍省次官のときは、米内光政海軍大臣や後輩の井上成美とともに海軍三羽烏として、陸軍を中心とする開戦論者と非戦論を闘わせていた、そのために山本は好戦論者から命を狙われ、海軍は山本の身を守るため連合艦隊司令長官に転勤させた、そんな逸話であった。      山本の非戦論は、彼我の力関係を冷静に評価して戦うべきかどうかを軍人らしく判断するもので、今にして思えば特段に優れたものとまではいえないかもしれない。しかし、当時の支配層は、まことに情けないことに、孫子の兵法「敵を知り己れを知れば百戦危うからず」の応用判断能力を欠き、敵の実力を知らないままに無謀な戦争に突入したのである。    「敵を知る」ことは大事だが、さらに「己れを知る」ことも大切だとおもう。アメリカとの戦争の最大原因は、中国の東北部・満洲をめぐる「攻防」であった。当時、日本は満州を国家安寧の生命線とみてその確保と拡大に命運をかけていた。他方アメリカは、蒋介石政府の要請を受け、また自らの利権確保の企みもあって、日本に対して満洲からの全面的ないし部分的撤退を求めていた。日米交渉はこの点を中心に行われたが、日本はアメリカの要求を容れず、交渉を決裂させて真珠湾攻撃の道を選んだ。    日本は、満州の確保と拡大をめぐる「己れ」の利益追求の「非」を知るべきであった。アメリカとの関係ではたしかに帝国主義的利権をめぐる対立であったかもしれないが、 中国との間では「侵略」であった ことは間違いない。その「非」を自覚できていれば満洲から退く選択があったはずである。    当時の天皇制政府の責任はいうまでもないが、国民の側もマスコミを中心として満洲確保が国土の狭く資源の乏しいわが民族の生きる道であることを信じて疑わなかった。マスコミはじめ国民は、先人が血を流して確保した満州を死守すべきだとし、そこからの撤退を求めるアメリカを憎み、その要求を拒絶した政府を熱く支持したのである。国民に知らされていた情報には限りがあり、時代のパラダイムは否めないが、満