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「敵基地攻撃能力」米軍指揮下でミサイル飛び交う悲惨な戦争に巻き込まれる!

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    この12月16日、政府は、敵基地攻撃能力の保有と大幅な軍事費増額などを盛り込んだ安保関連3文書を閣議決定した。    早とちりしてはいけない。これはまだ政府の構想ないし提案にすぎない。これから国会で審議される。関連法案が採決され、予算が可決されないと、ミサイル購入さえその実現にはいたらないのである。    国会審議は来年早々に始まる。閣議決定を「絵に描いた餅」にしなければならない。   老生は、この敵基地攻撃能力について、①戦争の悲惨な拡大、②自衛隊が米軍指揮のもとで翻弄される、この2点を強調したい。 まずは①の点、相互に多数のミサイルを発射し合い、その結果、双方に恐ろしい戦争被害をもたらす点である。専守防衛に反するとか、先制攻撃にあたるといった違法性の次元の思考にとどまってはおれない。 敵基地攻撃手段としての強力なミサイルは、どちらかからひとつ発射されたら、その一発で終わるはずはなく、あっという間に反撃、再反撃ととめどなく発射がつづくことになろう。戦争は質と範囲を越えて拡大し、悲惨な結果をもたらす。 私たちは、ミサイルという「矛」を使用する戦争が、これまでの「盾」による防御に徹した戦争とは大きく様変わりすることに、想像力をこらさなければならない。 今ひとつ②の点である。敵基地攻撃能力の保有は、自衛隊がいよいよ100パーセント米軍指揮下で行動する補完部隊になってしまう、ということである。 12月18日の読売新聞は、敵基地攻撃能力の保有を歓迎したうえで「 反撃能力を行使するには、軍事拠点の把握やミサイルの探知が必要で、これらには米軍の協力が欠かせない。政府は、長射程のミサイル配備を進めるとともに、日米の連携を深めることが大切だ」と書き、危うさの一端をはからずも吐露している。 敵基地攻撃能力を有するミサイルを正確に敵の基地やミサイルにうちこむためには、標的の位置、動きを精密に探知する必要がある。その探知は人工衛星などを使った高度かつ精緻な技術によるほかなく、米軍に頼らざるを得ない。もともと、自衛隊は創立以来、米軍により育成され指導を受けてきた。今度また米国製のミサイルを装備し米軍との共同訓練までしているのである。 米軍が台湾有事などに自らが中心となって立ち向かおうとしているとき、協力者として期待される自衛隊と一体となって効率的に戦闘しようとし、自衛隊の指

[台湾有事] 日本は在日基地からの米軍機等の出撃を「事前協議」で「ノー」というべきだ

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 「台湾有事は日本の有事」と言われだしてから、老生の頭にこびりついて離れない疑問がある。     米軍機が日本の基地から紛争地域に出撃するとき、米国との間で事前に協議して、その出撃に「ノー」と言えることになっている。1960年に改訂された日米安全保障条約を締結する際、  「岸・ハーター交換公文」で取り決められた事前協議の制度である。こう書かれている。 「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる 戦闘作戦行動 (前記の条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との 事前の協議 の主題とする」   憲法9条をいだく日本が他国の紛争に巻き込まれて戦争になることを拒むためである。  「 台湾有事」となれば、アメリカが台湾防衛のために軍事行動に出る可能性がある。その場合、放っておけば、日本の米軍基地はその地勢的状況からみて、戦闘機、軍艦、ミサイルなどの出撃基地となることは避けがたいものとなろう。 日本の米軍基地が「台湾有事」の戦闘作戦基地となれば、中国がここを狙い、ミサイルや空軍機などで反撃してくることはほぼ確実であろう。     このようにして日本は、いやおうなく戦争に巻き込まれる。    にもかかわらず、「事前協議」の場で、在日基地からの米軍の出撃に「ノー」というべきだとの議論がほとんど聞かれないのは、いったいどうしてであろうか。 日本もアメリカと共同して台湾防衛のために闘うべきだというのなのなら「ノー」といわないのも当然かもしれない。   また 、 日本は「敵基地攻撃能力」などを備え抑止力を増強したうえで中国が台湾を攻撃する「台湾有事」を抑止すべきだとする自民党右派勢力の声もある。そうした勢力も、米軍の在日基地からの出動には「ノー」と言いたくないかもしれない。 しかし、そうまでして戦争を望んでいる勢力は、はたして日本にどれだけいるのだろうか。中国嫌いの人でも多くは、戦争までは避けたいと思っている。 事前協議で「ノー」 というべきだとの声は当然大きくなってしかるべきだと思われるのに・・・。  日米安保条約下での安全保障体制を基本的に容認しつつも、台湾有事が日本有事を招くことを憂慮する国民は、平和外交により「台湾有事」すなわち中国と

現代の密約・日米共同作戦計画はヤバイ!

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    戦争の計画書が作られようとしている。 日米共同作戦計画 と呼ばれる。  いわゆる「台湾有事」を念頭においた、日米協力による軍事対応計画である。多くの国民は戦争に巻き込まれる不安を抱く。     ある論者は 昨 年6月に 自衛 隊幹部から 打ち 明けられたという。 「米軍が『台湾有事の日米共同作戦計画を早期に策定すべきだ』と自衛隊に強い圧力をかけてきている」と(石井暁「台湾有事と日米共同作戦」・雑誌「世界」2022年3月号35頁以下)。    今年の1月7日に開かれた「2+2」(日米の外務、防衛の閣僚を中心とした安全保障を協議する会合)の後の共同発表には「緊急事態に関する共同計画作業について、確固とした進展を歓迎した」とある。     その存在だけは明らかであるものの、計画の具体的内容は霧の中である。林外務大臣は、この点に関する記者からの質問に対して「お尋ねの件につきましては、具体的な内容で、相手との関係もありますので、差し控えさせていただきたいと思います」と述べ、岸防衛大臣も同様な秘匿姿勢をとっていた。 台湾有事になれば、米軍は「台湾防衛」のために出動する可能性がある。ここ1年のうち、バイデン大統領は何回かそのことを口にしてきた(国務省はいつも「火消し」をするけれども)。最近のペロシ下院議長の台湾訪問に抗する中国の軍事演習をみるにつけても、米中台の「軍事的緊張」が高まってきていることは間違いない。 日本がこれにどう対応するのか。国民の巻き込まれ不安も当然、この日米共同作戦計画にはだれもが注目せざるを得ないはずのものである。にもかかわらず、この計画へのメディア 識者の関心度は低いように思える(コロナ禍中であり、ウクライナ戦争もあったことではあるが)。 隠居老人は、「台湾有事は日本有事」と軽く言い放つ風潮に強い警戒心を持っている。日本は戦争の方向に一歩進もうとしているのに。 しかしながら、老生のこの懸念に対して、周囲のある者らもあまり関心を示さない。むしろ胡散臭くさえ見られることもある。「中国きらい、中国こわい」の感情が、中国を警戒する政府の一連の防衛政策を「日本を守るのに仕方がないではないか」と受け止めている。さほどの心配などしていない。 日米共同作戦計画 と聞いても、同じように受け止める向きが多いのではなかろうか。 老生は言いたい。「でも戦争

(台湾有事)日本は支援するのか回避するのか ― 小説「オペレーション電撃」を読んで

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 台湾有事を題材にした小説「オペレーション電撃」(文芸春秋社)を読んだ。元陸将の山下裕貴氏が執筆し2020年に刊行したものである。   (小説の内容)   台湾侵攻を企図した中国人民解放軍とこれに対する日本の自衛隊との攻防を描く。  中国は、独立に奔走する台湾を制圧する方針に踏み切り、人民解放軍を台湾に上陸させようとする。そのための重要な準備の一つとしてアメリカ空母の接近を阻止する作戦をとる。その作戦基地とするため日本の先島諸島の一つ( 多良間島 )を隠密裏に巧妙な方法で占拠する。そこから発射する対艦弾道ミサイル等を用いて、アメリカ空母を台湾に近寄れなくしようとする。その基地設営を計画実行する中国とこれを察知した日本との間で兵士・軍属・政府首脳らの攻防が「手に汗を握る」形で展開される。  もう少し詳しく説明したいところだが、冒険スパイ小説の性格をもつ本書の場合、野暮というべきものであろう。  最新の電子兵器を併用する一連の作戦行動の場面は、さすが陸将として長年の軍事経験がもたらすプロの筆なればこそのリアル感がある。また、双方のスパイ要員らの、絶世の美女スパイを交えての攻防は、ジェームズ・ボンドもかくありなん、迫力あるエンタテイメントとなっている、と言っておこう。   (こんなことは現実にはありうるだろうか)   しかしながら、読み終えてみて、隠居老人は、この小説が台湾有事という現実性のあるテーマをとりあげていながら、そのコア部分の設定が現実の戦略判断とあまりにもそぐわない点がなんとも気になる。   中国人民解放軍が台湾侵攻準備のために日本の離島を占拠しここを基地としてことを起こそうとしている点である。   中国は台湾侵攻時にアメリカや日本が台湾に味方してその侵攻制圧を妨害することを最も気かけ警戒しているはずである。台湾だけなら力の差からいってその制圧はそう難しくない。ただ、アメリカや日本が台湾に加担したとき、これら「強国」をも相手に戦わざるを得ないとならば、そう簡単にことは運ばなくなる。考えれば誰でもわかる。現にこの小説でも、アメリカ空母の台湾接近の阻止を、台湾侵攻の成功の鍵を握るものとして重視しているほどである。   であるならば、アメリカ空母接近阻止の必要性があるとはいえ、中国が日本の離島を占拠することは戦略上とりえない作戦である。それは日本に対する

中国の台湾周辺での軍事演習 「一つの中国」再考

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 中国軍は、今月4日から7日までの予定で、台湾周辺においてこれまでにないほどの大規模な軍事演習を行った。アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問に抗議し台湾独立を牽制するためのものであった。  日本を含めたG7の国々がこの演習を批判する声明を出した。朝日新聞もまたその社説で「過剰反応、無責任な威嚇」と中国を非難した(8月7日)。国民の多くも中国がここまで強固な軍事演習をすることに反発するか戸惑いを感じているように思われる。     隠居老人は、中国を非難する前に、ペロシ議長の訪台が台湾独立の機運の盛 り上げに大きな影響を与えるものであって、中国がそのことを重大視していた理由を考えてみる必要があ ると思う。   いうまでもなく中国の台湾政策の前提は「一つの中国」であり、これを揺るがす動きにはこれまでも常に警戒し警告をしてきた。今回、議長の訪台に対し軍事演習を含む強い態度で対応したのも、その延長線上に位置する。中国にとり「一つの中国」は「核心的利益」であって代替がきかないほどに重視されるのである。 「一つの中国」再考 ざっくり言って「中国はひとつであり、台湾はその一地方」というに尽きる。台湾が中国とちがう政治制度(民主主義)をとることはまったく問題としていない。台湾が中国から分離して独立国家(二つの中国)となることを禁じ、そのことを唯一の柱としている、 重要なことは「一つの中国」原則は中国だけが唱えているものではないことである。ここ半世紀のうちにアメリカ、日本をはじめ世界のほとんどの国々の承認するところとなり、今や国際法にも準じて尊重されるべき国際秩序となっている。 したがって、台湾が国としての承認を求めて独立に動こうとすれば、中国が反対するのはもちろんであるが、世界からも安定した秩序を乱すものとして警戒される。独立を掲げて選挙を勝ち抜いたはずの台湾の蔡政権が、今は「独立を求めない」と言うのも、そのことを考慮せざるを得ないからである。蔡政権の後ろ盾と言われるアメリカ政府も台湾が独立へ向けて暴走することを抑えているのである。   「一つの中国」は国際関係において次のような法的扱いとなる。 ①   中国と台湾との間の紛争は国家間の問題ではなく、中国の内部問題、内政問題として取り扱われる。その紛争に他の国が介入することは内政干渉となり原則として許されない。同じ理屈からで

「朝日新聞政治部」を読む

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   この5月に講談社から出版された「朝日新聞政治部」を読んだ。    久しぶりに胸の昂ぶりをおぼえた。まことに不合理・非道な事件、そのわりに筆致は冷静であり、公正、率直さも感じさせる。隠居老人は近時とみに大手マスコミに対する不審を募らせていたが、その原因の一端をみごとに解き明かしてくれた思いである。     著者の鮫島浩氏は、朝日新聞政治部の第一線の花形記者を経て、若くして「特別報道部」のデスクとなり、将来を嘱望されていた。政治・社会の闇に切り込みその深層に迫るスクープ記事をいくつも世に送り出していた。  東日本大震災のあと、彼のチームは福島原発事故の取材をしていた。「隠された事実」を追求し、その成果は「プロメテウスの罠」として紙面をかざり、2012年度新聞協会賞を受賞した。    当時、政府事故調が東電福島第一原発の吉田所長から聴取した唯一の公式記録があった。だが、政府・関係者はこれを固く秘匿していた。その「吉田調書」を部下の記者が取材により独自入手した(もちろん取材源は秘密)。国民にひた隠しにしていた原発事故の真実を伝える第一級の機密文書である。  鮫島デスクらはこの「吉田調書」を記事にして世に出した。東電と権力の隠蔽体質と危機管理のずさんさを暴露する大スクープであった。社内外から絶賛をあびた。     東電や政府の責任拡大に直結しかねないこの重大報道に対し、当然ながらこれを好ましく思わない勢力がいた。その勢力がその報道の事実関係における「小さなほころび」部分をとらえて、「捏造」などの言葉で報道全体を非難するようになり、ことは次第に新聞社への大きな圧力となっていった。   「小さなほころび」は鮫島デスクもこれを認め、批判をうけた当初に「訂正」を編集部の上部に申し出ていたが、上部はたいした問題ではないとみて、この訂正申し出を受けつけず放置した。たしかにその「小さなほころび」は、客観的にみれば、記事の本筋をそこなうほどのものではなかった。    朝日新聞に対する非難の声は、当時浮上していた「慰安婦記事問題」や「池上コラム問題」などと合わさり、同社幹部にとっては大きな脅威となってきた。ただ、そこで新聞社は、報道の自由、とくに巨大組織・権力の不正を暴く使命にかんがみ、(「小さなほころび」は謝罪するとしても)「捏造報道」などの非難に対しては毅然と反論し、

「琉球処分」清国は大いに不満 尖閣問題に尾を引く

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  前回に続いて、尖閣問題について考えたい。  その前に、明治初期の「琉球処分」をめぐる日本と清との葛藤を簡単に見ておきたい。これが後の尖閣問題と大いに関係するからである。  (琉球国から沖縄県へ    琉球処分をめぐって)  琉球(のちの「沖縄」)は、14世紀に明と朝貢・冊封関係に入ってその属邦となり、16世紀に清に変わってからもその関係は維持されていた。他方、17世紀に薩摩藩の侵攻を受けてからは日本の支配も受けるようになり、中国と日本の両方に従属する関係(従属的二重朝貢)にあった。  19世紀に入り、薩摩藩が琉球との関係を強めたあと、明治維新後の日本 政府は、琉球に対し清との冊封関係の廃止を求め、日本へ統合しようと企てた。 明治12年( 1879年 )にはついに、熊本鎮台の歩兵300名、警察官140名などを派遣し、武力を背景に琉球藩を廃し、 国王尚泰に 東京居住を命じて華族に列し、代わって中央から県令(知事)を配し、沖縄県を置く措置を強行した。いわゆる 琉球処分 である。  琉球処分に対しては、士族の中に特権的身分が失われる不満から清国に亡命して救援を求めるなど、旧支配層に琉球王国の再興を期す動きもあって、現地の政情は必ずしも穏やかではなかった。(⑪37頁) 他方、属邦の琉球を奪われる形となった清国には日本の措置に対する強い不満があって、なんどか対日抗議を行ったものの、阿片戦争敗北の後であり、さらにフランス、ロシアからの外患をも抱えるなか、とうてい実力で介入する余裕はなかった。 琉球処分の年6月に、アメリカ前大統領であったグラント将軍が清国に旅行で訪れた際、清国はグラントに琉球問題に関する対日仲裁を頼み、グラントはこれを受けて日本を訪れ、内務卿伊藤博文に問題を提起した。(⑰155頁) こうして始まった日清交渉で、日本が提案した宮古及び八重山の先島諸島を清に譲り、これに代えて清国から最恵国待遇を得るという「琉球処分条約案」がまとまり、調印の一歩手前まで行ったが、清国側の事情でこれが流れ、交渉は失敗に終わった。日本政府の沖縄への支配が継続しつつも、琉球をめぐる確執は日清戦争まで続いた。 1 894年、朝鮮の支配などをめぐる日清戦争が勃発し、日本の圧勝のもとに翌年終わり、 下関条約 が結ばれた。この条約で、日本は清国から台湾とその付属諸島の割譲