現代の密約・日米共同作戦計画はヤバイ!
戦争の計画書が作られようとしている。日米共同作戦計画と呼ばれる。
いわゆる「台湾有事」を念頭においた、日米協力による軍事対応計画である。多くの国民は戦争に巻き込まれる不安を抱く。
今年の1月7日に開かれた「2+2」(日米の外務、防衛の閣僚を中心とした安全保障を協議する会合)の後の共同発表には「緊急事態に関する共同計画作業について、確固とした進展を歓迎した」とある。
台湾有事になれば、米軍は「台湾防衛」のために出動する可能性がある。ここ1年のうち、バイデン大統領は何回かそのことを口にしてきた(国務省はいつも「火消し」をするけれども)。最近のペロシ下院議長の台湾訪問に抗する中国の軍事演習をみるにつけても、米中台の「軍事的緊張」が高まってきていることは間違いない。
日本がこれにどう対応するのか。国民の巻き込まれ不安も当然、この日米共同作戦計画にはだれもが注目せざるを得ないはずのものである。にもかかわらず、この計画へのメディア 識者の関心度は低いように思える(コロナ禍中であり、ウクライナ戦争もあったことではあるが)。
隠居老人は、「台湾有事は日本有事」と軽く言い放つ風潮に強い警戒心を持っている。日本は戦争の方向に一歩進もうとしているのに。
しかしながら、老生のこの懸念に対して、周囲のある者らもあまり関心を示さない。むしろ胡散臭くさえ見られることもある。「中国きらい、中国こわい」の感情が、中国を警戒する政府の一連の防衛政策を「日本を守るのに仕方がないではないか」と受け止めている。さほどの心配などしていない。日米共同作戦計画と聞いても、同じように受け止める向きが多いのではなかろうか。
老生は言いたい。「でも戦争はイヤでしょう!」「中国と台湾の間に紛争が起こってもそれは両者の問題、なのにどうして日本がかかわりになるの? ほっとけばいいではないか!」「中国は台湾を制裁したいだけで、ついでに日本を攻めようなどとは考えていないよ」「台湾だけでなく日本も敵にまわすことは中国にとってもしんどいはずだ」「台湾の人々を助けたい気持ちはわかるけど、わが自衛隊員たちを犠牲にしてまでするの?」「アメリカが台湾を助けたいなら勝手にやらせたら!日本が同調することはないよ!」
「青春の血」を残している(!)老生としては、もう少し「格調高い」反戦論をぶちたいところだが、「中国きらい」感情に打ち勝つためには、このような論調で説得するほかない。(この言い方、えらそうかなあ? なにせ78歳ですから許してください)。
上記論者の石井氏は、自衛隊幹部の苦情を次のように聞いている。21年夏ころから米側が「日米間の政治プロセスを待っていられない」「台湾海峡を挟んで戦争が差し迫っていることを理解しているのか」といった強硬な発言を繰り返すようになり、「彼らの頭の中には軍事的合理性しかない。日本の政策も国内法も関係ない。ましてや南西諸島の住民の存在など、はじめから考えていない」という。
台湾有事となっても、日本の自衛隊が出動するには、種々の法律により要件や手続が必要となる。憲法9条のもとわが国には、武力行使(戦争)がそうたやすくできないさまざまな法的制約がある(たとえば、集団的自衛権を行使するならあの難解な「存続危機事態」の要件t–自衛隊法76条1項2号–が必要だし、国会の承認も必要。在日米軍基地からの米軍機の戦闘行動には事前協議が必要など)。しかしながら、米軍が台湾有事を自衛隊の援助のもとで対応したいと考えているなら、日本の煩わしい要件や手続などすっぽかしてでも自衛隊の早急な協力(あるいは米軍の自由行動)を求めたいはずである。それが軍事的合理性というものだ。
そうした米軍と自衛隊の協力関係を迅速かつスムースに運ぶ段取りを決めるのがこの日米共同作戦計画である。これをヤバイといわずしてなんと言おうか。
この秋からの国会では、敵基地攻撃能力の審議をはじめ、「防衛計画の大綱」「国家安全保障戦略」など安保3文書の報告もされる予定である。それらと密接に関連するものとして台湾有事の問題が討議されることは必至。その中でも、策定中とされていた米軍との共同作戦計画がどうなったか、どういう計画となるのかは、国民の聞き逃すことのできない大きな関心事である。
政府は、防衛事項だとか、相手のあることだから、などと言いつくろい、その具体的内容を明らかにしようとしないかもしれない。しかし、それですまされるほど軽い問題ではない。なにせ「開戦」となるかどうかなのだ。
野党は、巻き込まれ不安を抱く国民の声を背に政府をきびしく問い詰め追及し、計画の内容、危険性の有無を明らかにしてもらいたい。
隠居老人は国会での議論を注視しつつ、なお引き続いて、日米共同作戦計画についての問題性、危険性を考えていきたい。日本の戦争と平和の諸問題がここに最も集約されているように思えるからだ。
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