[台湾有事] 日本は在日基地からの米軍機等の出撃を「事前協議」で「ノー」というべきだ
「台湾有事は日本の有事」と言われだしてから、老生の頭にこびりついて離れない疑問がある。
「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動(前記の条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする」
新安保法制に反対した立憲民主党の岡田克也氏は、民主党政権当時に外務大臣を経験しているが、当然、日本と中国とが戦争になる事態を憂慮している政治家だと思われる。その岡田氏は、「事前協議」の重要性にかんがみ、これが政府の専権事項となっていることが問題であり、法律を制定し、国会への事前事後の承認、報告すべきだとの考えのようである。まことに貴重な見識である。しかし、その岡田氏も、現状では、周辺有事が起こった時、わが国は「事前協議」で、米軍の戦闘行動を「ノー」と言うのは困難である、とみている(注2)。なぜそうなのか。なぜ「ノー」と言えない! 「ノー」と言えることを交換公文で約束しているのに・・・、老生には理解ができない。
田中均氏も似たような発言をしている。同氏は小泉内閣のとき、北朝鮮との交渉に事前の段取りをつけ、拉致問題解決と両国関係改善に向け一役買った元外交官である。現在も、わが国の平和問題について、柳澤氏らと同じような「台湾と中国に自制を呼びかける」外交努力により平和構築をすべきだとの、まことに見識の高い主張をしている。その田中氏も、米軍が沖縄の基地を使って台湾に軍事介入することについて、日本との事前協議を求めたとき、日本は「ノーとは言えない」という(注3)。日本の平和主義を守る姿勢にあると思われる同氏がなぜ「ノーとはいえない」というのか、老生には理解できない。
そこには「日米同盟」という緊密な外交関係にひそむ、説明しにくい「約束ごと」があるというのかもしれない。台湾有事に際し米軍の戦闘行動に協力しないでは、アメリカは日本が他国から攻撃されたとき防衛協力をしてくれない、とか・・・。防衛してもらうために戦争に協力する・・・まるで「ミイラ取りがミイラになる」ような論理。いかに日米同盟が大事だとしても、そのようなわけのわからない「約束」ないし「暗黙の了解」のようなもので、戦争への階段を昇ってもらっては困る。
老生は、この得体のしれない「事前協議」制度を徹底的に明るみに出し、戦争を回避し国民を守る手段として、制定当時の理念のままに健全に運用することを願っている。政府がそのような姿勢で臨んでくれれば、国民はどんなに気が休まることであろうか。
「台湾有事は日本の有事」を憂慮する平和勢力は、たしかに「台湾有事」とさせない外交努力をまず求めるべきであろう。 ただ、そうした努力むなしく、あるいはいとまもなく「台湾有事」が起こってしまったとき、「日本の有事」とさせない手立てを政府に求めないでいいのであろうか(もちろん、日米共同作戦計画とか、敵基地攻撃準備など、日本有事を招きかねない戦争準備もやめさせなければならないが)。
注2 岡田議員は、2022年4月13日外務委員会での林外務大臣との質疑の中で一般論として事前協議の場で「これに同意しないというのは、極めて私は例外的な場合にならざるを得ない」とか「安易にノーと言うことは恐らくできない」などと述べている。https://www.katsuya.net/topics/article-9266.html
先日、老生は、神戸の「9条の会」の集りで上記「ND」の代表世話人である猿田佐世氏の講演を聞いた。そのなかで、猿田氏が「事前協議」の場で日本側が「ノー」ということで米軍の行動を牽制する重要性を述べていたのは、老生には心強い思いがした。ただ、猿田氏が岡田克也議員を訪ねて事前協議で日本側が「ノー」と言えないものかを質問したところ、岡田氏はやはり即座に「それは無理だよ」と答えたという。
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